ゆめちゃんは、今日は朝から不機嫌です。
お母さんが、
「どうしたの?」
と、聞くと、
「昨日みっちゃんとけんかをしたの」
と、答えました。
みっちゃんとは、ゆめちゃんと大の仲良しのお友達です。保育園でも同じ組です。そのみっちゃんとけんかをしたというのです。
「どうしてけんかをしたの。お母さんに教えてちょうだい。」
ゆめちゃんは少しだまっていましたが、話しだしました。
「あのね、みっちゃんに絵本を貸してあげる約束したんだけど、持って行くの忘れちゃったの。」
「そしたら、みっちゃんが怒って、もう遊ばないって言うの。」
「だから、私も、もう遊ばないって言ったの。」
お母さんはゆめちゃんに聞きました。
「ゆめちゃんは、どう思うの?」
「一回ぐらい忘れたって、怒らなくてもいいじゃない。」
「お母さんは、それはちがうと思うな。」
ある時おやさまが、山中こいそに、「目に見える徳ほしいか、目に見えん徳ほしいか。どちらやな。」と、仰ったそうよ。そこで、こいそは、「形のある物は、失うたり盗られたりしますので、目に見えん徳頂きとうございます。」と、お答え申し上げたそうです。
「約束は目にみえないけど、大事なことなのよ。特に仲良しのみっちゃんとの約束はとても大事だと、みっちゃんは思っているかもしれないわね。」
「誰でも忘れることはあるから、忘れてしまったことはしょうがないけど、後で素直に謝ることが大事なのよ。」
「分かった、明日みっちゃんに謝るね、そして絵本を貸してあげるね。」
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