鳴物と身体

 おつとめの鳴物の話の続きで、お母さんは九つの鳴物と身体の九つの道具とはつながっている事を話して下さいました。

「おやさまはね、おつとめの鳴物と身体の手足や目や耳などはつながっているのよ。」

「女鳴物のお琴は身体で言えば目です。三味線は耳、胡弓は鼻です。」

「男鳴物の笛は口です。拍子木は右手、チャンポンは左手、太鼓は右足、すりがねは左足、小鼓は男女一の道具です。」

「なぜお琴は目なのか、ちょっと難しいけど話するはね。それはお琴は十三本の糸があり、右手で糸を弾いて音を出し、左手で糸を押さえる強弱によって音程が変わるの。右手と左手を使ってメロディを奏でるのよ。目は上下ではなく左右に付いているでしょ、また目には沢山の神経がつながっているのよ。だからお琴は目なの。」

「次になぜ三味線は耳なのかね。三味線は三つに分かれた胴と棹を通して、三本の糸で音を出すの。耳も外耳・中耳・内耳というように三つの器官を伝わって音を聞くから、三味線は耳なの。」

「胡弓が鼻なのは、胡弓は押しても引いても音を絶やさないように弾くのよ、鼻も呼吸する時は息を吸うて吐いて途切れる事がないからなの。」

「男鳴物の笛はなぜ口なのか、それは笛は口で吹くからなの。他の鳴物は全て手で演奏するけど、笛だけは口を使うから笛は口なのよ。」

「この四つの鳴物は、メロディーを奏でるでしょ。メロディーによって気持ちが良くなったり、不快になったりするのよ。」

「また目、耳、鼻、口は全て顔にあって、人間の感情、喜んだり悲しんだり、怒ったり泣いたりは、顔の表情で分かるのと同じなの。」

「だから、心を合わせて鳴物を良いメロディーで演奏することは、顔の表情がニコニコと喜んでいるのと同じでなの。」

「分かった、鳴物はそんなに大事なんだ。」

 ゆめちゃんは、鳴物の事が少しわかったような気がしました。