隣の健太君が何かブツブツ言ってやってきました。
「ナオじいちゃん、いる?」
「健太君、どうしたんだ」
「うちのおばあちゃんったら、何でも結構結構って念仏みたいに言うんだ」
健太君のおばあちゃんは熱心な天理教の信者です。毎月教会への参拝を欠かしたことはありません。
「僕が虫歯を病んでいても結構結構、雨が降っても結構結構、この前なんか台風で屋根の瓦が落ちた時も、結構結構と言ってたんだよ」
「そうか・・・。健太君は虫歯になった時どう思ったかな?」
「虫歯になった時は、痛いし食べ物も食べられないし最悪だった」
「虫歯はどうしてなると思う?虫歯は虫歯菌が酸を作って歯を溶かすことなんだ」
「虫歯になれば歯が抜けて食べ物を噛むことが出来なくなるし、入れ歯をしなければならなくなる」
「じつは、わしも入れ歯だが、入れ歯で噛んでも美味しくないぞ」
「でも、虫歯は痛いよ」
「虫歯になれば神経に触るから痛い、でも痛いから良いんだ。痛いから歯医者さんに行って歯の治療をしてもらうだろ、治療をすれば虫歯の進行は止められて、しばらくは歯は良い状態を保つ」
「健太君のおばあちゃんが結構だと言ったのは、虫歯で痛くなったから結構だと言ったんだ」
「虫歯になっても痛くないと放っておくだろ、すると虫歯がどんどん進行して歯が抜けてしまう。若くてもあっという間におじいちゃんだ」
「まだおじいちゃんには、なりたくないな!」
「だから痛いと云うのは有難いことなんだ」
「何事でも長い目で見ないと本当のところは分からない」
「健太君の虫歯も原因は健太君自身にある。日頃から歯磨きをしていればこんな若くして虫歯になることはない」
「でも、神様は虫歯になっても治療をするようにと痛みを与えてくれた、だから歯医者に行って治療をしてもらったろう」
「これを、成ってくるのが天の理、と言う」
「健太君のおばあちゃんはそれを知っていたから結構だと言ったんだ。おばあちゃんは受け取り上手、喜び上手だな」
「僕も受け取り上手、喜び上手にならなくっちゃな」
「ナオじいちゃんありがとう」
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