朝起きは

 ハルさんは、神様に近づいてきました。(天理教では出直すと親神様の懐に抱かれると聞いていますので、つまり、年を取って高齢になってきたと云うことです)

 ハルさんは、居眠りが日課です。お昼ご飯を食べたら、二時間から三時間ほど、お気に入りのソファーで眠ります。

 ですから、その時間帯に電話を掛けてはいけません。しばらく待たされた挙句に、機嫌の悪そうな声で「誰だ私の眠りを妨げる奴は」と、叱られます。

 ハルさんは、好き嫌いがはっきりしています。食べ物でも何でも。

 食べ物では、お酒が飲めないのに、酒の肴になる物が好きです。ビールも日本酒も、ワインも焼酎もウィスキーも嫌いです。息子に「私がお酒が好きだったら、あなたのお酒をみんな飲んでしまうわよ」と豪語します。

 蛇や鰻などの長いものが嫌いです。これは他の人にとっては嬉しい事で、何かの会食で鰻が出た時は、隣りに座った人は二人前頂くことが出来ます。その代わりに、雲丹が大好きなので出た時は、私に頂戴と言って持って行きます。

 教祖のお話に、つぎのものがあります。

 「朝起き、正直、働き。朝起こされるのと、人を起こすのとでは、大きく徳、不徳に分かれるで。」

 これを読んだとき、ハルさんは「私は不徳だわ」と嘆きます。何故かと聞いたら、「毎朝、うちのお父さんは私に『早く起きろ、早く起きろ』と言って私を起こすのよ。それで、自分は後で起きて来る。私は起こされるから不徳だわ」と言うのです。

 ハルさんの旦那さんの話は、教祖もびっくりでしょうね。

 私は思います、起こす旦那さんの方は後で起きるのだから半分徳がある、ハルさんは起されても先に起きるのだから半分徳がある。勝負で云ったら引き分けですね。

 ハルさんは、今は一人ですから、自分で自分を起こして、徳を積んでいると思っています。

 ハルさんは、朝起きとは何時起きる事を云うのだろう、と思いました。朝とは何時の事だろう。

 ある先生が、朝と云う字は草からお日様が顔を出していることを表している、と言うのを聞きました。つまり日の出が朝だと云うことです。

 これを聞いてハルさんはホッとしました。

 ハルさんは、分からないことがあると、胸のところがもぞもぞします。それで、分からないことがあると、息子に調べろと指令を出します。分かると、ホッとして子供のような顔になります。