見えて良かった

 年を取ると、身体のあちこちにガタが来ます。目もそうです。

 白内障と云う病気があります。白内障とは、水晶体が年齢とともに白く濁って視力が低下する病気です。

 水晶体とは、目の中でカメラのレンズのようなはたらきをする組織で、外からの光を集めてピントを合わせるはたらきを持っています。

 通常は透明な組織ですが、白内障では白く濁ってしまうため、集めた光がうまく眼底に届かなくなり、見え難くなります。

 ハルさんも高齢になり、白内障が進んできました。

 年に二回通っている眼科の先生から、白内障の手術を勧められました。

 でも、ハルさんは目が見え難くなっているのは感じていましたが、手術が怖いので断っていました。誰でも手術は怖いですね。特に目は、見えなくなったらどうしようと、先案じが出ますからね。

 ハルさんは、白内障の手術をした、いろいろな人に聞きました。誰もが、手術して良かった、良く見えるようになった、と言います。

 それで、ハルさんは決心しました。手術をしようと。

 白内障の手術は、技術が進んでいるので、昔とは違ってきています。日帰りで手術する病院もあるそうです。

 ハルさんは、二泊三日の入院となりました。手術は片目ずつ間を空けて行うので、二回入院することになります。

 一回目の手術は順調に行き、ハルさんは元気に帰って来ました。

 退院する時、看護師さんに言われたことがあります。「手術した方の目は、無理をしないで大事にして下さい」と。

 ハルさんは、二、三日は言う通りにしていたのですが、寝ているのも飽きてきたと云って、食事の支度や洗濯をしたのです。そうしたら、手術した方の目に異常が感じられたのです。

 でも、ハルさんは信仰者です。すぐに悟りました。「目は水だから、水は低い所に流れるから、低い素直な心にならなければならない」

 ハルさんは、我を張っていたことを反省し、看護師さんの言う通り、しばらくは無理をしないようにしました。

 今は、二回目の手術も終わり、目も良く見えるようになりました。

 ハルさんは、思っています。手術して良かった、見えて良かった。