ハルさんのスマホデビュー

 ハルさんの携帯電話が壊れてしまいました。ガラケーです。

 携帯電話と言っても、ほとんど電話を掛けることはありません。

 掛かってくることもほとんどありません。

 昔は時々掛かってきたのですが、ハルさんは耳が遠いため携帯電話の音が鳴っていても気づかずにいることが多いので、最近は家の電話に掛かってきます。

 だから今、ハルさんは携帯電話を目覚ましと万歩計代わりに使っています。

 それじゃ携帯電話でなくても良いと思うでしょうが、この携帯電話は出直した旦那さんの思い出の品なのです。ですから、待ち受け画面はもちろん旦那さんの写真です。

 ハルさんは携帯電話を買い替えることにしました。お店の勧めでスマートホンにしました。

 最初は、これ(人差し指を横にスライドさせる動作)が出来ないから、と渋っていたのですが、息子に説得されて買うことにしたのです。

 今は高齢者向けのスマートホンがありますので、使いやすくなりました。

 アイコンが大きくて押し間違いが無くなりましたし、タッチの微妙な感覚が分からなくても、ガラケーのボタンを押した感じに近いように、長く触らないと反応しないようになっています。

 でも、どこを触ればどうなるのかがほとんど分かりませんので、息子のレクチャーを受けながら使うことにしました。

 まずは電源を入れることからです。電源はボタンがありますから、すぐ覚えました。

 次は、ロック画面の解除です。スワイプ(指を画面に付けて、付けたままで指を動かす)がなかなか出来なかったのですが、練習したら出来るようになりました。

 ハルさんがどうしたら毎日スマートホンに触るようになるか、を息子は考えました。そうだ孫の写真を見せよう。

 息子はあちこちに連絡して、孫や曽孫の写真や動画を集めました。そして、ハルさんのスマートホンに入れました。

 息子の思惑通り、ハルさんは毎日のように写真や動画を見ています。だから、ロック解除は自然と出来るようになりました。

 これからのスケジュールは、電話を掛けたり受けたり出来る事、メールが出来る事、インターネットで調べることが出来る事。

 なかなか大変な道のりになりそうです。でも、教祖は楽しんで通る道や程に、と言われているように、楽しむことが大事だと、ハルさんは思っています。

 言い忘れましたが、ロック画面の写真は、息子に言って、ハルさんの旦那さんの写真になりました。